独自のカリキュラム

30年余の実績。新入生のすべてが履修するプログラム
総合基礎実技

総合基礎実技とは?

美術学部は,美術科,デザイン科,工芸科,総合芸術学科の4つの学科から成ります。入試は,この4つの学科ごとに募集し,各専攻に分かれるのは,1年次前期の「総合基礎実技」を履修した後,各専攻の基礎を学んでから。2年次以降(デザイン科は3年次以降),それぞれの専攻の学びと実技へと進んでいきます。
本学の芸術教育の特色は,創造活動の土台となる基礎力の育成を重視する点にあります。入学後の半年間,美術学部すべての新入生が,科・専攻の枠を超え,総合基礎実技を履修します。

総合基礎実技の魅力は,自分が立っているのが道の上ではなく,広大な地面の上だと実感し直してみることに似ていると思う。
そのためには,これまでの蓄積を総動員する必要があるかもしれないし,今まで使ったことのない考え方,感情,視野,方法,技術が必要になるかもしれない。それを自分自身や同級生たちで探すことになるかもしれない。
広大な地面に立つことで見えてくる,自分とは異なる存在を認めて多様性を感じ取ろうとする姿勢や,想像し自分のこととして共感できる力,一つの事象にいくつもの観点を見いだそうとする態度。
大学で芸術を学ぶことを,ここから歩み始めよう。

美術学部長 中原浩大

2020​年度 総合基礎実技カリキュラム

今年度の総合基礎実技について

今年の総合基礎実技は、学生同士、学生と教員、学生とキャンパス…実際の触れ合いができない状況を余儀なくされました。

いかに受験までの美術観から自由になって、自己と世界を見つめ直し、自らの創作衝動の原点を掘り起こしながら、京芸での学びをスタートさせるかが要でした。

そのためにまず重視したのは、ふだんの生活環境そのものを「芸大化」することでした。

課題テーマ「この惑ぅ星の上で」

惑星  Planet  の語源はギリシア語のプラネテス  πλανήτης(さまよう者)。天動説の時代にそう呼ばれた星に私たちは住んでいる。私たちは星とつながっているか。この星の芸術を求めてさまよう者(プラネテス)がここに集い,歩む手がかりを共に探す。

・プレ課題(4/23~4/28)

自己紹介「あなたはどんな人ですか?」

「あなたはどんな人ですか」という問いかけに対する答えを,各自が21cm 四方の平面に自由に表現する。立体を作った場合も撮影して21cm の画面にする。

​「屋根を架ける・屋根で繋ぐ」

屋根は建物の上部を覆う構造物である。雨や雪,日差しといった天候の変化から人や家財、動物を守ると同時に,たくさん連なった様子がその地域らしい風景をつくるものでもある。人々の生活を支え心のよりどころとなる「屋根」をテーマにした制作を行い,私たちの居場所や人々が集まることを再考する。

・第1課題(前半:5/11~5/22,後半:7/13~7/30)

・第2課題(5/25~6/12)

​「模写をする」

名画を模写します。

そのまま再現するには欠点の多い描画材を使ってもらうのは,単なるイジワルではありません。再現するということを解釈してもらいたいからです。それぞれの基準と技法で捉えた「再現」というものがあり,これは又ジャンル固有の表現の違いに繫がっていったりします。「そっくりにする」というシンプルな入り口から見えるものについて考えましょう。

・第3課題(5/25~6/12)

​「檸檬爆弾はいかが?」

梶井基次郎の小説『檸檬』をヒントに,日常の場所や行動の観察・測定を経て「あなたにとっての檸檬=X」を見つけます。次にその「X」を通して世界を測り直してゆきます。そのとき,私たちの考え方やふるまいを拘束していた「ガラスの天井」に穴が開き,今までとは異なる新しい世界を覗き視ることになるでしょう。最後の試行では「あなたの檸檬爆弾」をあなたを包囲する「??」へ投げ込み炸裂させてください。

 
幅広い視野と探究心、コミュニケーション能力を養う。本学独自の教育カリキュラム
​テーマ演習

テーマ演習とは?

テーマ演習は,総合基礎実技と並ぶ,本学独自の教育カリキュラムです。一定のテーマに沿って,学生と教員が専攻を超えて,実践的な研究活動を行うことで,芸術に関わる幅広い視野と探究心,そしてコミュニケーション能力を養います。研究テーマを学生から提案できることもこのカリキュラムの魅力の一つです。

​こんなテーマ演習がありました ①

街道をめぐる

【担当教員:上英俊,宇野茂男,川嶋渉,田島達也,永守伸年】

昔の人が鯖を運搬したとされる「鯖街道」の歴史や鯖の運搬法・調理法について学び,福井県の小浜から京都市の出町柳までの鯖街道約80kmを2日間で完歩する予定でした。しかし今年はコロナ渦の中で,各自でしっかりトレーニングを積み,それぞれが歩くことにしました。テーマを「五芸をつなぐ」として,行けなくなった五芸を巡るバーチャル旅行に挑戦!しました。総距離1,277kmに及ぶとてつもない距離を2日間かけて徒歩と自転車で制覇しました。学生だけではなく職員も参加し,挙げ句の果てには家族,友達まで巻き込んで大学の授業の枠を超えたものと成りました。事前に郵送された「各大学付近の名産」を、到達時にみんなで食べて,行った気分を味わいました。そして,2日間の体験を元に各自が作品にしました。

自分の歩く姿と道中の風景をハコバンコにて制作

自分の体験を出来事ごとに色で表現

学生の歩行と自転車のデーター,朝6:30に集合して一日約10時間動いた

歩行と自転車で痛めた筋肉を想像して描いた作品

​こんなテーマ演習がありました ②

和菓子の文化史

【担当教員:田島達也】

「練り切り・きんとん・こなし」,「錦玉・琥珀糖・寒天」,「饅頭・団子・どら焼き」の3つのグループに分かれ,百人一首を題材にした和菓子をそれぞれ制作しました。百人一首は,100人の歌人の和歌を一人一首ずつ選んで作った秀歌撰であり,旅の歌や恋の歌,故郷を惜しむ歌など,様々な情景が詠まれています。百人一首から造形のイメージを膨らませることによって,情緒のある美しい和菓子を作ろうと考えました。試行錯誤を重ねることにより,とてもクオリティの高い和菓子が出そろいました。

「凪」…凪のような海に波打ち際から引かれている一隻の小舟が浮かぶ情景を想像し作成

「重」…秋の空に浮かぶ満月を三笠(どらやき)で表現。すすきが彫られたお盆も菓子に合わせて自作した

「紅衣」…餡を包んだ練切に薄い寒天をまとわせドライストロベリーを散らすことで,紅葉散る龍田川のイメージを重層的に表している

​こんなテーマ演習がありました ③

衣装を作る

【担当教員:藤井良子】

本テーマ演習は学生提案によって開講された演習授業です。授業は発案者5名の学生たちを中心に自主運営され「衣装を作る」をテーマに計19名の学生で授業が行われ,文字通り学生が主体となって進めたテーマ演習です。

コロナ渦の中,担当教員から発案学生に授業の延期を投げかけましたが,自宅制作やオンライン上での運営であっても授業を進めたいという意思は強く,オンラインでの開講になりました。オンラインによる定期的な学生同士の報告会を通して,お互い励まし,刺激をうけあいながら,制作・研究を進め,各自でポートフォリオにまとめました。

スケッチと完成衣装(一例)